人間は強いストレスを受けると、腎臓の上にある副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンが急激に分泌されます。

コルチゾールは生命維持に欠かせないもので、普段は朝の目覚めを促したり、日常のストレスに対抗するために正常値が分泌されています。しかし、「ストレスホルモン」と呼ばれるように、大きなストレスを感じると分泌量が増え、交感神経を刺激して体を緊張状態にし、脈拍や血圧を上昇させて脳を覚醒させるのです。

ストレスには急性期と慢性期があり、その時期に応じてコルチゾールによる体の状態も変わってきます。

ストレスの急性期

最初は、ストレスに立ち向かう、または逃れるため、コルチゾールが集中的に分泌され、闘い、逃走しようという反応が起こります。

①血糖値上昇
エネルギーを確保するため、グリコーゲンをブドウ糖に変換するために血糖値が上昇します。

②血圧上昇
血圧を上昇させ、心拍数を増加させます。これにより、身体が十分な血液を送り出し、酸素や栄養素を供給することで、適切な反応が可能になります。

③免疫機能の低下
免疫系の反応を抑制し、炎症を抑えます。ストレスに対し、エネルギーが免疫反応ではなく、危機に対処するために優先的に使われるようにするためです。その結果、感染症にかかりやすくなります。

④筋肉の分解
エネルギー確保のため筋肉の分解が進み、筋力が低下する可能性があります。

⑤脂肪の分解
エネルギー確保のため、糖質やタンパク質だけでなく、脂肪を分解してエネルギーを産生します。

強いストレスを受けた急性期では、痩せる場合が多くあります。しかし、ストレス状態が長引くと、体はストレスに順応しようとして、急性期とは異なった反応が起こります。

ストレスの慢性期

ストレスが長期間続くと、過食や肥満につながる可能性があります。

①腹部脂肪の増加
コルチゾールが慢性的に高い状態であると、体内の脂肪細胞、特に腹部の脂肪細胞が活性化されやすくなり、腹部に脂肪がつきやすくなります(中心性肥満)。内臓脂肪がつくことで、インスリン抵抗性の状態になり、メタボリックシンドロームになりやすくなります。

②食欲の増加
食欲を抑える「セロトニン」や「レプチン」の分泌が抑制され、食欲が増します。ストレスの急性期はショック状態のため食欲が低下しますが、慢性的なストレス状態では食欲が増加し、太りやすくなります。いわゆる「ストレス太り」です。

飲酒によってもコルチゾールの分泌が高まります。ストレス発散のためにお酒を飲んだのに、逆にストレスホルモンの分泌が増加してしまうのは皮肉ですね。

このように強いストレスを受けると、短期間でも長期間でも健康を害する原因になります。ホルモンを乱さないためにも、生活習慣が大事です。

ストレスを避けることはできませんが、受け止め方を変える、ストレスを緩和することは可能です。ストレス時は自分の健康を考える良い機会と捉え、生活環境や習慣を見直してみましょう。

管理栄養士・今井久美